この病気は１９６４年、イギリスの皮膚科医師スイート博士（Ｒ．Ｄ．Ｓｗｅｅｔ）により急性発熱性好中球性皮膚症（Ａｃｕｔｅ　ｆｅｂｒｉｌｅ　ｎｅｕｔｒｏｐｈｉｌｉｃ　ｄｅｒｍａｔｏｓｉｓ）として報告され、日本では博士の名前から「スイート病」と呼ばれています。

私たちの体には、外から入ってきた有害な異物にたいして攻撃して自分を守ろうとする自己免疫の機能があります。その働きが自分自身の組織に対して攻撃をし、さまざまな異変をひきおこす病気があります。

よく知られている病気に膠原病やベーチェット病などがありますがスイート病も同じような病気で全身性の自己免疫疾患ということになります

突然、皮膚に赤い斑点が現れ、はじめは腕や足におおく出てしだいに全身にでてきます。痛みをともなうことがあり水泡となってきます。斑点の根元は少し大きなしこりのような塊がわかるようになってきます。

４０度前後の高い熱がでます。出るときは体が寒さでガタガタふるえるような急な発熱のことがあります。
風邪などの発熱の場合、一晩寝ると朝はすこし落ち着いていることがありますが、スイート病ではほとんど下がることがなく苦しめられます。

口内炎があらわれることがあります。唇の裏がわや舌、のどの奥などに丸くふちの盛り上がったような形が多いようです。大変痛く食事がたいへんです。

手や足の関節がボールが入っているかのように腫れることがあります。

眼に異常が出ることがあります。結膜の浮腫や充血、上強膜炎、虹彩毛様体炎になることがあります

そのほかに血管、神経、内臓、粘膜などに炎症をおこすことがあります

しかしこれらの症状がすべて現れるわけではなく、個人差があり順番も症状の程度も同じではありません

症状の特徴

１、持続的な高熱がある。全身倦怠感のある３８度以上、時に４１度をこえるような高熱がつづく

２、全身（特に両手足が多い）に有痛性隆起性浮腫性の赤斑ないし結節ができる

３、末梢血白血球がふえる

４、皮膚生検にて赤斑の真皮に血管炎を伴わない好中球の細胞浸潤がある

このほかに口内炎、関節炎、陰部潰瘍、血栓性静脈炎があることや結膜の浮腫や充血、上強膜炎などの眼症状があります

そのほかに

１、悪性腫瘍、急性骨髄性白血病、クローン病の合併症例がある

２、再発性脳炎や髄膜炎がある神経スイート病の症例がある

３、抗生物質の投与はまったく効果がないが、副腎皮質ホルモン（ステロイド剤）の全身投与に劇的な効果がある

原因と治療法

原因は残念ながら不明である。

自己免疫疾患であることはわかっているが、なぜそうなるのかわかっていない。
なんらかの感染症に対する過敏反応とする見解やＨＬＡ（ヒト白血球抗原）のＢｗ５４抗原との関係から遺伝子の関係を指摘する見解もあるが確定していない。

完全な治療法も確定していない。

症状をおさえるのにステロイド剤(副腎皮質ホルモン剤）の全身投与が劇的に効果がある。ただしこの薬は強い副作用（糖尿病の悪化、骨粗しょう症など）があるので注意が必要である

ステロイド剤の投与で症状がなくなり、１ヶ月から数ヶ月で以前とまったく変わらない生活を送っている人もいる
また再発もなく合併症や後遺症（失明など）の出ることもなく現役復帰している例が多い。

副腎皮質ホルモン（ステロイド剤）の主な副作用

ステロイドとは
腎臓の上部にある副腎の皮質でつくられているホルモンのうち糖質コルチコイドという成分を化学合成したもので炎症や免疫反応を抑制する作用がある

最初に必要十分な量を服用し、効果が出たら少しづつ減らしていく。服用すると体内でつくる機能が失われてくるので、急に服用をやめると体内の必要量が不足して危険な状態になる。

おもな副作用は
感染症・糖尿病・骨粗鬆症・胃潰瘍・大腿骨頭壊死・白内障・緑内障・高脂血症・高血圧・肥満・ムーンフェイスなど

眼科診療プラクティス　２５　眼と全身病ガイド（文光堂）そして
溝口昌子：スイート病　最新医学　４３　　　　　　　　　より引用しました